犬も歩けば

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    いなば、子供産んで以来めっきり家庭的になっちゃった、元夜遊び友達と久しぶりにお散歩に出かけたよ。

    麻布の閑静な裏道を抜けて、広尾を経由し、青山へ。

    六本木でぶいぶいゆわしてた頃は、夜遊びの翌日二人で散歩したっけなあ。

    春のうららかな日差しの中、のんびり歩けばよく手入れされた民家の白梅に、緑の鶯が蜜を吸いに止まって、そりゃもうのどか。

    会話の内容もいとのどかに、

     

    「…もう君の赤ちゃんが四歳かー、時が経つの早いねえ」

    「本当にね。こないだお台場のTOYOTAの子供用サーキットつれてったら、子供用の車喜んで運転してたよ」

    「運転できるんだ! あたいもろくすっぽできない運転を! すごい子供の成長!!」

    「そのあと、観覧車でお弁当食べよう!って乗り込んで、広げて半分食べたところで、“飲食禁止です”って張り紙見つけて、慌てて“ここ食べちゃダメだったよ!”って言ったら“どうしよう!どうしよう?!”って言いながら、口いっぱいにとりあえず卵焼き詰め込んでてさ…。そんな判断ができるようになったなんてなぁ…」

    「賢いじゃん! 前までほんと半分くらいわけわかってなかったのに、コミュニケーション成り立ってるよ!」

    「そうなのよ。あ、いなばさん、そこ右じゃなくて左ね」

     

    散歩の達人で裏道や抜け道、隠れ家的なお店を見つけるのがじょうずな彼女の先導で、麻布の奥の奥に分け入るあたいたち。

    たどり着いたのは、いかにも雰囲気のある民家に囲まれ、緑もそれなりにある小さな公園で、

     

    「へえ、こんな道の先にこんな公園あるなんてしらなかっ…た? って、ちょっ、あれ見て!!」

     

    一瞬まったりしかけたいなば、何気なくやった視線の先の壁のいたずら書きを見て、爆笑。

     

    何しろ壁にでっかく、たいへんわかりやすい文字で書いてあった言葉がふたつ。

     

    1) ちんぽ

     

    そして

     

    2)童貞

     

    「命かけてもいい、これを書いたのは、間違いなく中学生の童貞だぁ!!!」

    「書かずにはいられなかったんだろうね、自分のちんぽと童貞であることについて」

    「ほかに色々卑猥なこと書こうと思えばいくらでも書けるだろうに、チョイスがちんぽと童貞! もうその思考が完全に童貞!!」

    「こんな言葉、うちの4歳のこどもが喜んで言ってるわ…4歳と同レベルって…」

     

    それが童貞。

     

    また、そこいらは高級住宅街、たぶん犯人の童貞はおそらく近隣に住む良家の師弟に違いなく、それが証拠に字が無駄に上手い。

     

    「一生懸命下手に書いたんだろうけど、もとの字がたぶんきれいすぎて、全然下品に書けてないよね」

    「うん、すごい読みやすい。気の毒になってくるほどわかりやすい、童貞」

    「良家の童貞が精いっぱいやってみた破廉恥がコレかぁ…なんか愛しく思えてきた」

    「こんなに見てほのぼのするお下品落書きもないね」

     

    そのままずっと残してあげたい、そんな童貞とちんぽでした。

     

    それにしてもこの界隈歩いてて、一人でもほかの人とでも、こんな面白いもんに遭遇したこと過去一回もないのに。何この秘密の花園。破廉恥な夜遊び時代を遠く離れても、彼女と歩くとこんな不思議のドアが開くなんて、遊び人の底力マジすごすぎ。

     


    それぞれのかつあげ

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      いなば、ベリーダンスの観音先生に「踊ってるとき表情がいつも同じ、もっと色んな顔して!」と指導が入った。

      もともと演劇畑からやってきたので、観音先生は演じる系ダンサーなのである。

      ご本人は演じるっていうか、もう憑依しちゃってるけど、千里の憑依も一演技から。

      いなばの顔のパターンといえば「うっふん」と「あっはん」」ぐらいなんで、確かに自分でももうちょっとなんとかせねばと思い、youtubeで「流し目」についていろいろ見てみた。

      大衆演劇とか宝塚とか見て、すげー、すげーと普通に感心してたら、こんなのに行きついた。

       

      えー。

       

      おかざきななさんの、目的別流し目七段活用 七段目。

       

      …すごい、これ、ただごとじゃない。

      いっけんアホっぽく見えるかもしんないけど、それは彼女がわかりやすく大げさにやってくれてるからであって、これをさりげなく音に乗せて適切な速度やれば、見事な流し目になる。っていうか、初代弁天先生がやってた動きだ、これ!! 丁寧にゆっくりやるとこうなるんかー!!!

       

      しかし、このバブリーなファッションとメイクと髪型に、トーク。

      いなばは完全にこの方と同じ系列の顔形スタイル肌色で、彼女のすべて夜遊び時代の自分そのままですごく…なんか…しょっぱい。あたい年取るとこうなるんだな…。覚悟は、しとこう。

       

      そんなわけで、ななさんから目が離せなくなり、次々に動画を見たあたいが、驚愕のあまり、呼吸が止まったのがコレ。

       

      えー。

       

      色気のある話し方はこれ! フジコエクスタシーブレス

       

      …これ、あたいの友達のすんげえぶりっ子で、すんげえオンナから嫌われてて、そしてすんげえ殿方からはモテてる女子のしゃべり方そのまんま!!!

      あいつ!! ただ、鼻にかかった高い声でしゃべるからぶりっ子に聞こえてたんじゃないんだ! ブレスが大事だったんだ!!

      思わず当人に速攻見せたら「あたし…ここまでひどくないよね!?」って七割認めてるその喋りがもう完全にフジコエクスタシーブレス。

      吐息でネットでマジ包んでしまえちゃうんだなハート! 呼吸法の大事さはヨガや瞑想で知ってたはずだけど、ぶりっ子トークでもそうだったなんて!

       

      思わず感服して、いなば早速帰宅したメタボさんに、フジコエクスタシーブレスでお出迎え。

       

      「すぅううううう! ぅっおっかっえっりぃいいいいいいい!!!」

       

      喜んでくれるかな?と思ったが、

       

      「…いなばちゃん、大丈夫? 苦しそうだヨ?」

       

      逆に心配をかけてしまった。息を吸うのが難しすぎて、額に青筋浮いて最後にむせたのがたぶん敗因。こんな大変なことをスムーズにすべての喋りでやってるあのぶりっ子、マジすげえ。体力あるわけだよ…。

       

      「一応この動画を参考にしたんですが」

       

      と言って見せたら、

       

      「…ナルホド。確かにこれはぶりっ子ちゃんのしゃべり方ソノモノダ。でも、なんかいなばちゃんのはチョット違うんだナ。もう一回やってみテ?」

       

      「すぅううううう!! っおっかっえっリぃいいいいぃいいぃぃ?!」

       

      「うん…、全体的に力はいりすぎ。…あと、なんかアブラッコイ」

       

      それな。

       

      ちなみにななさんの技の中には、「セクシーカツアゲ」というたいそうバブリーでいなば好きするものもあった。

      それもメタボにぶちかましてみた(ちなみにおかえりよりじょうずにでけた)ら、目が点になった後。

       

      「…これで、日本人のオトコは金を出すのカ?」

      「たぶん出さない。いや、酔っぱらったバブル世代ならあるいは」

      「バブル世代以外にはどうすればイイ?」

      「うーん、そうだねえ。直接言わない方がいいんじゃない。例えば“最近家族が体壊しちゃって、ちょっと実家に援助してるんだ…。そしたら、スイーツとか全然食べる余裕もなくて、なんか痩せちゃって、ラッキー? 見て、手首とかこんな細くなったの。握ってみて? …最近、あんまりゆっくり美味しいもの食べてないなあ。あ、ごめんね、暗い話しちゃったね!”とか?」

      「スゴイ! いなばちゃんそんなこと言ってたの?!」

      「いや、あたいはストレートに“おごってください”ってゆってたけど」

      「やっぱり!!」

      「それで意外におごってもらえてたけど。あれ、直接でやっぱいいのか? まあ、さておき、メタボさんだったらどのカツアゲされ方がイイ? 1)セクシーカツアゲ、2)遠まわしカツアゲ、3)いつものいなばの「よう、メタボ金出せよ」カツアゲ」

       

      腕を組んで目を閉じ、むむむとしばらく考えた後、メタボさんは言ったよ。

       

      「3)カナ」

       

      慣れ親しんだカツアゲられかたですからね。

       

      そんな会話を交わして昨夜は寝て、今朝のことです。

      寝起きでテンション低めのままダイニングテーブルに座ってるメタボに、イチゴヨーグルト持って来ながら、

       

      「今日あたい夜は友達と夕飯食べにいくからね」と言った瞬間だった。

       

      カっ! と目を見開いたメタボが、あたいをガン見して、

       

      「スウウウウゥウウウウ!」

       

      と言った。

       

      そして、

       

      「ッッオッハヨォオオォオオオウ!!」

       

      さらにまた、わざとらしく「スゥウウウウゥウウウ!!!!」ともう一息吸ったていを見せた後、

       

      「ッオッカネエエエエ、クゥウダサアアアアアアイ!!!!」

       

      一瞬意味がわからなかった。

       

      それから、カツアゲされた純粋な気分の悪さ50%と、見事な本歌取りに対する純粋な面白さ50%が、いなばの中で真正面からぶつかり合って混然一体となって体中をかけめぐって、思わずその場に膝をつき。

      気持ちを立て直すのに30秒ほどかかった後、立ち上がれないまま、沈痛なトーンでこう言わざるを得なかったよ。

       

      「メタボさん、今のすごい面白かった。すごい面白かったけど、もうやんないで」

       

      死ぬほど面白いのに、まったく楽しくない、こんな感覚初めて知った二月の朝。

       

      ちなみに個人的にこれも大好き。

       

       


      クロゼットゼロ

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        いなば、今お片付けがマイブームで、お洋服を片付ける段階に来もうした。

         

        服な。

         

        10年前イギリスに行ったとき、一通り処分した。

        離婚した時にも一通り処分した。

        再婚して引っ越した時も一通り処分した。

         

        なのになんでだ。

         

        もとの量まで増えてる。

         

        そう、服って増える。

        食べ物と違って食べないから、捨てない限りなくなんない。

        でも食べ物と同じで消費期限は確実にある。

        あたいのクロゼットの中の服、おそらく半分は消費期限は切れてる。

         

        でも高かったんだよー。

        でも可愛いんだよー。

        何よりまだ着られるんだよー。

         

        捨てられないようおうおうおうおう。

         

        ってなわけで、行き詰ったときは、そう、本だよ本。読書に救いを求めるべし。

        ワードローブについての本20冊くらい読めば大事なポイントは洗脳してもらえる。

        今回のポイントはこの3つと見極めた。

         

        1) 「今」の自分に「必要」な服を持て

        2) そのためには全部出せ

        3) いるものだけ残せ

         

        行為としてはごく簡単なんだけど、「今」の自分に「必要」をタイトに見つめるのが辛すぎ。

        そんな苦行に着手するのがいやで、とりあえず、収納について勉強することにした。

        そしたらミラクルな一冊があった。

         

        えー。

         

        クローゼットの中身

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        こちらの本、クリエイティブな仕事をしてる色んな人のクロゼットを公開して、収納の仕方とか、各シーズンに合わせたコーディネートとかをたくさん写真で見せてくれるのです。

        「天然生活」出版なんで、ほっこりナチュラル系のクローゼットが多めなので、それが全く似合わないあたいには、服のコーデ自体は全くもって参考にならなかったんだけど、一個だけ、すごい雷に打たれたみたいに気づいたことがある。

        それはもう2017年1月最大の発見でした。

         

        えー。

         

        これほどお洒落な人々の、これほど片付いたクローゼットの中であってすら、だ。

         

        「この服、いらなくね? つか、かぶってね?」

         

        って思う服がほとんどだった。

        そう、これこそが。

         

        「他人のクロゼットの中なら、7割、別にいらないってわかる」現象。

         

        そう、捨てられない問題は服じゃなく、「自分の」って部分だった。

        うん。自分の服じゃなきゃ、わかる。いるものといらないもの。すっごいわかる。

        ガンは自分だった。

        ってことはだ、「自分の」じゃなきゃすっきり簡単に片付く話ですよね。

         

        よし、人に決めてもらおう。

         

        というわけで、いなば、ある晴れた日にうちにお茶しに来たさとたんに頼んだよ。

         

        「今から目の前に持ってる服全部出すから、いらないやつ教えて」と。

         

        そしたらおうまいがっ、おういえす。

        15分くらいで全部片付いたぜ、べいぶ。

         

        「自分の」じゃなければ、「いらない」は簡単にわかるんだ。

        すごい。

         

        他人、マジありがてえ。

         

        今回、あたいがやったことと言えば二つだけ。

         

        1、他人をまるっと信じて

        2、でっかいゴミ袋をひとつ準備して、「これいらない」って言われたやつは問答無用ではじから詰め、終わった瞬間袋をきつくしばって速攻ゴミ捨て集積所に置いてきた。

         

        これだけ。うわまじ簡単、そして今ちょおすっきり。

         

        もちろん、選んでもらってる最中は絶叫に次ぐ絶叫であります。

         

        「ええ?! これもうだめなの?! 可愛いのに!!」

        「服は可愛いわよ、でもアラフォーで、その可愛さはナイでしょ」

        「ええ? これもダメ? 高かったのに!!」

        「だから何!」

        「これどうしてダメ? 素材良いのに」

        「丈感があってない」

        「これはなんで? まだ着られるよ」

        「着用感出すぎ」

         

        自分が思ってるのの倍くらいアウトだった。でもうっすらそれらがアウトなのはわかってた。必要なのは、そう断定されることだった。

        証拠に、ゴミに出しちゃった後の今はすごいすっきりしてる。

        ちなみに、服片付けたいのに片づけられない人に、一番大事なのは「即捨てること」です。

        人にあげようとかメルカリで売ろうとか絶対思わずに捨てましょう。どれだけ高くてまだ着られる名のある服でも。だって、そんな能力あったらもうやってるもん。今までやってないってことはできないんですよ。

        処分するだけでつらいんだから、そこにもっと大変なこと加えたら余計やんない。大丈夫、売っても人にあげても結局最後は捨てられるんです。過程を省いてるだけ。それはエコだ。

         

        「人に選んでもらって」「即捨てる」。他人を信じて任せるのが向いてる人には、おススメ。ご褒美は即効性。

         

        思うに、これ、服だけじゃなくて、習慣とか、人間関係とか、物事のとらえ方、すべてに使える技かもしんないなーって今思いました。「他人の●●なら、いらないってすぐわかる」

        これを利用して、他人に「それ、いらなくね?」って言われたらなくしてみる。

         

        他人の言うことまるっと全部は信用できない、そう思ってたけど、でも自分も同じくらい信用できねえなあと服を通してわかったのはすごい収穫でした。


        残りの人生で今日が一番

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          いなばがうっかり入っちゃった高級スポーツクラブ、1年通ったらさすがにだいぶ慣れてきた。

          ここは何しろお高級かつわりと住宅街にあるので、有閑主婦がメインの客層。つまり30代はほぼいない、40代は小娘、50代で新人、60代が中堅、70代からがようやく本番。

           

          でも、みな見た目はくっそ若い。3割くらいの人は気持ちも若い。誰にどう口きいて良いのか、最初マジすげえ混乱した。

           

          自分が何やらかすか怖いので、お風呂も入って3か月は入らなかったし、サウナは最近ようやくふつうに入れるようになった。女の園マジびびる。

           

          さておき、最近は仲良しのひめたん(70代・最古参)がいるから、ちょっと安心だ。

           

          「ひめたん、今日もお美しいですな」

          「あらやだ、ありがとう!」

           

          彼女の素晴らしいところは、どんな小さなほめ言葉を絶対に聞き逃さないし、必ず嬉しそうな顔で恥じらいながらも喜んでくれるところだ。

           

          「もうこんな年だけどね」

          「いやいや、全然年の差感じませんよ」

          「そうなのよー。いなばちゃんなんか、娘くらいの年じゃない? でも、全然そんな気しないの。みなに同じ風にしゃべっちゃうのよね」

          「外国のレディみたいっすよね。ぶっちゃけ、年齢、いくつぐらいで止めました?」

          「そうねえ。…50、ううん60かしら」

          「いやいや、見た目年齢じゃなくて、心の年齢です。何歳ぐらいの気持ち?」

          「あら、それなら36ぐらいよ!」

           

          やばい、ひめたん年下。

           

          「私ね、昔、年をサバ読むときはね、干支を一回り分でやってたの。うふふ、そうするとほら、バレないでしょ?」

          「かしこい! じゃああたい今日から26歳になります!!」

           

          大声で宣言したら、向かいで静かに汗をかいてたレディがそこだけ拾って、聞いてきたよ。

           

          「あら、あなた26なの?」

           

          一瞬そのまま嘘をつきとおそうかと思ったが、やはり12歳はちょっと勇気がでなくて、

           

          「すんません、38です。あの、干支一周分サバ読むとぼろが出ないって話してて…」

           

          へどもど言い訳するいなばに、菩薩のように優しい微笑みをうかべ、全身ぬめるような白肌の彼女はこう言ったよ。

           

          「38歳! 女性として最高の年じゃない!! これからが一番楽しいときよ。20代はそりゃ綺麗だったけど、これからもっともっと成熟して良くなるわよ!!」

           

          …ああ。

           

          昔、婚活で自衛隊とお見合いパーティーのためにはるばる横須賀くんだりまでいなばいったですよ。30歳のときかな。

          その時、普段人のいないバス停に着飾った娘たちがいきなり大量にあらわれたので、地元人らしきおばあちゃまがたいそう驚いて、

           

          「まあまあ、これはなんですか?」

          聞かれ、

          「婚活、えーと、結婚相手を見つけるパーティーがあるので、それに行くんですよ」

          答えたら、

          「まあ! すてきね! あなたおいくつ?」

          「私はもう30歳です」

          「30歳、いいわねえ。あなた、これからが一番楽しいときよ、これからたくさん良いことがあるわよ」

           

          しわだらけの顔いっぱいに優しい笑顔で言ってくれた彼女のこと、思い出した。

          ちなみに婚活はさんざんだった。今思えば外人にしか受けないイケイケどんどん愛人向けボディコンのあたいが、ガチ保守の自衛官に受けるわけないんだが、マッチョ狙いで血迷って片道4時間もかけてあんなとこいって本当にアホだったけど、このおばあちゃまに会うためにいったと思えば悔いはなかった。

           

          すっかり忘れてたけど、8年ぶりに同じフレーズ聞かしてもらって、なんかすごい胸あったかくなった。

           

          アラフォーになっちゃったけど。

           

          こどももなかなか授かんないけど。

           

          これからが一番楽しいときだって、人生の先輩が笑顔で言うんなら、怖いことないなって。

           

          いなばがじんわり胸アツしてたら、目の前のレディが、急に険しい表情になり。

           

          「私もちょっと前は良かったけどねえ、さすがに40代、50代とすぎて、今はもう駄目だわ。しわだらけになっちゃった」

           

          目じりによく見れば少し笑いしわあるが、しみもくすみもまるでない、抜けるようなその白肌、40代にしか見えませんが。

           

          「…あの一体おいくつで?」

          「私? 私はね、60です」

           

          うちのママンの7つ下でこの美貌。いやあ、金の力ってマジすごい。ほんと時止まる。呆然とするいなばの前で、

           

          「本当38歳は良いわよ、何もかも…。私もね、40代は良かったわ。…でもね、50過ぎたら流石に駄目ね、50代からはもう駄目だわ」

           

          嘆き節が始まったとたん、あたいの隣のひめたんが、無表情ですぱっと言い返したよ。

           

          「何言ってるの、50代なんてまだ若いわよ!」

          「そんなことないわ! 私50すぎてから、めっきり老け込んで、肌も乾燥してきたのもの。それまではボディクリームなんていらなかったのに。もう、50過ぎたら駄目よ」

           

          ぼやく60代の前で、贅肉ひとつない裸いっちょで仁王立ちしたひめたんは。

           

          「50代なんて、全然若いわよ!!  いい? 本当に駄目になるのはね…60過ぎてからよ!!」

           

          言い捨てて、格好良く水風呂浴びるために出てった、ひめたんは、70代。

           

          あれ、あたいがフォローというか、若輩に対する激励だと思ってた「38歳これから一番素敵な年」は、単なる、ええと、単なる本音?

           

          うん。

           

          まあ、いずれにしても、あと20年はとりあえず大丈夫っぽいから、余裕ぶっこいて生きてこう、と思ったいなばでした。

           

          ちなみにその反対側では、80代のマダムズが

           

          「あの方とうとう90歳になられたけど、今日もトラック一周がんばって歩いててらしたわね…」

          「ええ、ええ、こないだおっしゃってたわよ、“お金があるだけの90代にはなりたくない”って」

          「あたくしも、90歳までここに来れるかしら…」

          「来れると良いわね…」

           

          うん、っていうか、あと何十年でも当分大丈夫だこりゃ。


          ああ おまへは何をして来たのだと…

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            四代目の観音先生のところで、ベリーダンス習い始めて1年経ち申した。

            新しく教えてもらってる曲というのが、たいそうテンションの上がるやつで、その名も、

             

            「スカート脱げよカロライナ」

             

            ってゆうタイトルで、ジプシー娼婦のカロライナに、おっさん達が

             

            「スカート脱げよ! 一発ヤラしてくれよ!! 上に乗ってケツ振ってくれよ!!ふぁんたすてぃっくなせっくすだぜ ワオ!! 爆発しちまうぜ!! 前からせっくす! 横からせっくす!! ワオ! ワオ!!」

             

            ってすごい歌詞。

             

            ちなみに本当に「せっくす」ってゆってる。連呼です。連呼。

             

            それに合わせて観音先生が、ケツを振りたくり、前からワオ! 横からワオ!! ワオ! ワオ!!って騎乗位のポジションで乱れ舞う、そりゃもう激しい振付をつけてくれたわけだ。

             

            …正直、今までのベリーダンス人生の中でいなば一番燃えてる。

             

            燃えてるんですが、この「スカート脱げよカロライナ」めちゃめちゃ難しい。

            本来下品なはずの動きを、格好良く見せるには、本当に上手に踊るしかないわけっすよ。

            重心低く構えて、でも軽やかに、あくまで余裕を見せながら。それにはもう、本当にしっかりしたインナーマッスルを、それもこの上なくしなやかに使えないと意味ないわけで。

            そんな筋肉の持ち合わせ、いなば38歳、まだないわけで。

            ところが、観音先生は、日々進化して靴下が筋肉で上がらなくなるアラフォーだから、いなばがヒーヒー言いながら前週の課題もクリアしてねえのに、あっさり振付変えやがる。

             

            「え? ここそのままターンから、前に踏み出すんですか?」

            「そう、キックして、一歩前に足踏み出して、その上でかがんで、客席に向かって見得を切って、それからターン。あ、キックが低いからもっと足高くあげてね」

            「え? ちょっと言ってる意味がわかんねえぞ? こうでこうでこうっすか?」

            「違う、こうでこうでこう、そしてこう」

            「…わかんねえ、全然わっかんねえ。ちょっと曲に合わせてやってみてください」

            「しょうがないなあ、だからー♪こうで、♪こうで、♪こうだよ!」

             

            見事に音楽に合って、ぱぱぱぱぱっとステップにターンに目線と一連の動きが決まった瞬間、感動のあまりいなば思わず口走ってた。わりといつも例えて感動を表現するあたい、その刹那脳裏にひらめいた、とびっきりのたとえをぶちかました。

             

            「おお、すごい!! まるでダンスしてるみたいですね!!」

             

            …。

            ……。

            ………。

             

            ドヤ顔でたとえきった顔になってたあたいを、能面みたいな無表情になって3秒ほど見守った後、観音先生あたいに言った。

             

            「いや、ダンスだから。いなばさん、ここに一体何しに来てるのもう一年!!!」

             

            それな。

             

            …あたい、11年ベリーダンスやってるけど、いまいちダンサーとして上達しない理由が、その瞬間わかった。

            あたい、ダンス習いにレッスン行ってない。

            先生と遊びに行ってる。

             

            「違うから! ダンスのレッスンだからね! これ!!」

            「えーでも、会ってー、おしゃべりしてー、終わった後ランチしてー、なんならそのあとお茶してー、やっぱ遊んでね?」

            「ダンスがメインだから! 他は全部ついでだから!!」

             

            でもだいたい歴代先生ともみなこの調子で遊んじゃってた。あたいにとってベリーダンスって、「ダンスの先生に会いにいってなんなら遊ぶ」行為だったんだなー。

            はー、謎が解けた。

            気構えが間違ってた。

             

            これからはちゃんと「ダンスを習いに行く」っていう気持ちでやろう、そうしたらダンスが上手くなるはず!!

            そんでもって、上手くなったあたいの「スカート脱げよカロライナ」を発表会でお披露目する日が来たら、お暇な読者様はぜひ見にいらしてください。すごいエロいから。うん。ちゃんと踊れれば、ものすごいエロだから。

             

             

             


            うの? さの?

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              いなば最近、掃除と片づけがマイブームで、色んな本を読んでおります。

              その中で、ピカいち面白くて、他と毛色が違った本がこちら。

               

              えー。

               

              片づけと収納がらくになる仕組みづくり ライフオーガナイズ もっと心地いい暮らし方


               

               

              この本、まずあなたが右脳派と左脳派なのかを問うてきます。

              右脳派はわりと直観的で、空間把握が得意で、アーティスティックな感じ。

              たいして左脳派は論理的、計画作りと遂行が得意で、職人気質な感じ。

              それをさらに、情報をインプットする時に右脳派か左脳派か、アウトプットする時に右脳派か左脳派かでチェックして、全部で4パターンのタイプ分けして、それぞれの特質に合わせて家をオーガナイズ(片付く仕組み作り)したほうが良いと言うわけです。

               

              残念ながら本では具体的に、「右脳インプット・左脳アウトプットだったらこういうやり方がお勧め」という感じにきめ細やかに教えちゃあくれないのですが、色んな人の綺麗にオーガナイズされた実例が、右脳左脳のタイプごとにこれでもか!と写真つきでわかりやすく載ってるわけです。

               

              あたい最初は「占いみたいなもんじゃーん、右脳でも左脳でもたいした違いねーっしょ」と油断ぶっこいて読んでたんだけど、途中で気づいた。

              いなば、左脳・左脳タイプなんですけどね。

              色んな実例の中で、左脳・左脳タイプの人の部屋作りが一番見てて気持ち良い。

              つか、見てるだけでも居心地良い。

              もう快感一歩手前。

              で、よく見ると、あたいの部屋の片づけ方(メタルラック使い)とか、収納道具の使い方(つるすのが好き)とか同じことしてるのがちょいちょいある!

              逆に、右脳・右脳タイプの部屋を見ると、なんか落ち着かない。居心地良すぎない。左脳・左脳タイプをまた見る。やだ、すごい気持ち良い。

              何コレ、面白い!!

               

              ためしにうちに遊びに来てたさとたんに見せてみた。

              彼女は左脳・右脳タイプだったんだけど、同じ左脳・右脳タイプの人の部屋を見て爆笑。同じような机使って、同じような収納してて、「私この部屋好きー、やだー、見てると落ち着くー、もっとほかの左脳・右脳の部屋の写真見せてー!」と大喜び。

               

              ちなみにメタボさんも左脳・右脳タイプなんだけど、この本の中の左脳・右脳タイプの人のオフィスが、独身時代の彼の部屋作りに酷似してて絶句してた。

               

              つまり。ってことはだ。

               

              自分が気持ち良い部屋って、ある程度もう決まってるんですね。脳で。

              だから、雑誌に載ってる綺麗な部屋とか、便利な収納グッズとかでも、脳のタイプに合わないと、ぜんぜん居心地よさにつながならないんだ。

              へええ。へえええええ。へえええええ!!

               

              自分が部屋作りする時には、まず見てて便利そうとか、お洒落そうとかではなくて、パッと見でシンプルに「ああー、心地よいー、見てるだけで落ち着くー、快感だー」って部屋を複数ピックアップして、その共通点を丸ごと真似するのが、どうやらよさそうだぞ、とわかったのがすごい収穫でした。

              あと、一緒に住んでるメタボとあたいの脳がアウトプットの時違う、これは無視しちゃいけねーな、と。

              あたいが主体のキッチン料理部分はあたいが快適に作ってもいいけど、メタボしかしないお菓子作りの道具とかは彼がやりやすいようにする方が良い。

              だって、写真で見てるだけでも、気持ち良いんだもん、脳に最適化された部屋。

              これが自分ちだったら最高やすらぎなわけだわ。

              こつこつ作って行こう〜。

               

              ちなみにネットで簡単な脳タイプ別の片づけ方法載ってたんで、貼っておきますね。https://matome.naver.jp/odai/2136879221297769101

               

              個人的にいなばの今の野望は、左脳・左脳タイプのすっごいお片づけ上手なひとんちに招かれてお茶することです。

              きっとそれって、あたいの脳的極楽にちがいない。

               

               

               

               

               

               

               

               


              乙女のちから

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                いなばヒモ体質のせいか、仲良い人はだいたいみんな働き者。

                 

                それもただ漫然と働くんじゃなく、向上して進化していく働き者だ。

                 

                そんなわけで、久しぶりに会った鍼灸師のさとたんが、涙目でこう言う羽目になる。

                 

                「いなたん、私、鍼のうちすぎで、7分袖のシャツがきつくなっちゃったの…」

                 

                言われて見てみれば、さとたんのふつうサイズの体についてる、こないだ会ったときにはふつうに女子っぽかった前腕部分が。

                もりっとしてた。

                筋肉で、もりっと。

                 

                「うはははは!! すげえこれ!! 結果が形に出ちゃってるよ!! 流石だよ!!」

                「しょうがないじゃない! 患者さんが増えて、鍼うつ数が増えてるのに、体がそのままだったらできないでしょ? …でも、これ以上太くなりたくなあーい! シャツがまくれなくなっちゃうぅうう」

                 

                気の毒だけど、わりとその日は近いうちに来るんじゃねーかな、と思ったいなばは、「ノースリーブ」を推しておいた。

                 

                で、今日は週一のベリーダンスレッスンで、観音先生がストレッチしながら、告白して来た。

                 

                「いなばさん、私、踊りすぎで、靴下が上がらなくなって来ちゃったんだけど…」

                 

                言われてみれば、観音先生のもともと綺麗に筋肉ついてたいかにもダンサーでございって感じな足の、ふくらはぎ部分が。

                もりっとして、横線入ってた。

                なんの横線かってふくらはぎがもっともふくらはぎってるところで、もうこれ以上あがれまへんという靴下の断末魔のゴム線がくっきり。

                一見だっさいが、意味がわかると恰好良くもあり。働くオンナの肉体改造遭遇も、二回目ともなれば、笑うよりなんかいなばしんみり来ちゃった。

                 

                「うわー…。本気で仕事が好きで打ち込むと、ふつうに体って変わっちゃうもんなんすねえ。こええ…」

                「いや、去年やって好評だった朗読舞踊劇の再演が決まって、色々変えようと張り切ってたら、なんかこうなってた。2枚づかいのベールを4枚にしたらすごい大変でさあ」

                「2枚の使い方を難しくするんじゃなく、倍に増やすって発想が漢(おとこ)だよね。セミから蝶にってか。大変すぎ」

                「だって、一目で違いわかる方が、見てて面白いじゃん!」

                 

                結果、一目見て違いのわかるふくらはぎになっちゃったっていうのが、な。ロングブーツを履くことはもうあきらめたらしいよ。

                 

                1枚のベールを使いこなすのにもひーこらしてるいなば、「なんでそんなに大変な風にわざわざ変えんの? 好評だったんなら前と同じでいいんじゃね?」と聞いたら、引き締まった顔で観音先生はこう言った。

                 

                「同じこと繰り返すんなら、二度目なんかやる意味ないよ。もっとすごくなってなきゃ私がつまんない」

                 

                偶然だろうか。

                さとたんも、まったく同じこと言ってたんだよね。

                ちなみに働く理系のふじこも、メタボも同じこと言ってた。

                 

                永遠のマンネリな自分を愛するいなばではあるが、こうやって時に軽々と、時に汗水涙をふり絞り、自分の体の形まで変えながら、進化してく働くオンナ(ときどきメタボ)を見てると、毎回本当にしびれるし惚れ直す。

                格好良い彼女たちをこれからも見て行きたいなあと思った年の初め。

                 

                 


                真っ

                0

                  寒い冬の朝、道を速足で急いでいたら、お寺さんの標語が目に入って来た。

                   

                  ありがたい説法じゃなく、俳句。

                  しかも山頭火の思いっきり自由なやつで、白い紙に、余白をたっぷりとって、ヘタウマな字でこう。

                   

                  まっすぐな

                         道で

                  さみしい

                   

                  …通り過ぎて三秒後に、めちゃめちゃさみしくなってしまったよ。本当に腑に落ちてさみしい。まっすぐな道はさみしい。生きるってさみしい。冬の朝だしさみしい。このさみしさって、忘れてるだけでいつもここにあったやつで、よくも思い出させてくれたな山頭火!!と思って、胸んとこあいたたたってしながら歩いてたら。

                  クリーニング屋のポスターが目に入って来た。

                   

                  なんか、ちょうどさっきのお寺の標語と同じくらいのサイズの紙に、見やすいフォントでくっきりとこう。

                   

                  真っ白な

                  シャツで

                  スッキリ!!

                   

                  一瞬でさみしさ消えた。

                  うん、シャツを綺麗に白く洗いあげたらスッキリだ。

                  間違いない、洗えばいいんだ、洗えば。真っ白でスッキリだ。

                   

                  5mの間で人生の深淵を除いて、日常に復帰した、素晴らしいコールアンドレスポンス、寺VSクリーニング屋。

                  いや、きっとこれはこらぼれーしょん。寺withクリーニング屋いっそここにfeaturingいなばで、

                   

                  さみしさは

                  洗いあげて

                  スッキリ   

                   


                  私の少女時代ーOUR TIMESー

                  0

                    たぶん今日の日記は男性読者にはまったく関係ない話です。すみません。

                     

                    いなば、年末に買った雑誌「クロワッサン」のお掃除特集を熟読してるときに、お勧め映画のページで丸つけてたやつがあった。

                    その名も、「私の少女時代-OUR TIMES-」。

                    今はさえないOLが、90年代の台湾で送ったきらめく青春を回想しちゃうストーリーで、みどころは優等生の彼と不良の彼の間で揺れる乙女心と、平凡な彼女が途中でおしゃれに変身するシーン。

                     

                    ええ。

                    もう。

                    こってこての少女漫画的要素のすべてが詰まってる。

                    一枚添えられた写真で、ヒロインが太めのマフラーをあの頃の女子高生が皆巻いてた形に巻き、ヒーローがあの頃の男子がたいていわけてたセンターパーツの髪型にして、パーカー着てるのを見て「何が何でも見よう」と心に決めたんだよ。

                     

                    そして、年末年始から数週間、胃腸炎でのたうち回って体調を崩して、ようやく今週「見に行こう」と思い立ったら、まいがっ。

                    関東地方じゃ、もう横浜の黄金町っていう見たことも聞いたこともないところの映画館でしかやってない。

                    それも明日までしかやってない。

                    その上、朝の9時からの回しかやってない。

                     

                    しょうがないので今朝、6時前に起きて急いで朝ごはんつくって身支度してメタボに水筒にミルクティー詰めてもらって、電車に乗って知らない町に出かけました。

                     

                    で。

                    見てみた結果。

                     

                    胸がキュンキュンしすぎて死にそうです。

                    キュン死ってやつです。あれの手前です。やばいであります。

                    なんでしょうね、処女のころ夢見てた素敵な恋愛のすべてが、スクリーンの中で輝いておりました。

                    何が良いってね、台湾なんです。日本じゃないの。だから、リアルすぎねーの。ポケベルとか短いスカートとか厳し目の校則とか受験とかはあるけど、微妙に違ってるの。程よくパラレルワールドっつーか、異世界感があって、現実の自分の過去と比べて傷つかない我に返らない。素晴らしい。

                    もう一つ良いのがね、あのね、もうね、不良だけど本当は頭が良くて、意地悪だけどいざという時には助けてくれて、前髪あげてもおろしても笑っても切れてもイケメンの、ヒーロー役の彼がね、…っ死ぬほど格好良いんですようおうおうおうおうおう。

                    桜木花道と流川楓の恰好よいとこだけ足して二で割って、真壁君入れてあと誰だ? ちょっとルフィが入ってる感じです。わかるか? わかんねーか!!

                     

                    これはあれだ。

                    12歳の時、スタンド・バイ・ミーで、故リバー・フェニックス君にときめいた時以来のときめきであります。

                    食欲がなくなっちゃうくらい格好良いよ。開いた口がふさがらないぐらいうっとりだよ。もう。

                    何しろこのヒロインとヒーロー、最後まで手もまともにつないでない。キスとかハグとかもない。なのにときめく。そう、ときめきって、接触が極小の方が半比例的にいや増すものだった、あの10代の頃。忘れてたなー。

                     

                    ヒロインの彼女も可愛いです。少女漫画のお約束通り「平凡でドジ」というのは設定だけで、こぼれそうに大きな目の、華奢な手足の、さらさらの髪の、でも嫌味のない透明感で溺死させられそうな美少女。

                    でも、ハリウッド映画やディズニー映画と違って、同じアジア人だし、90年代でちょっとダサめなので、安心して共感して見られるんですね。

                     

                    あと、この横浜から三駅先にある黄金町にある映画館、ジャックアンドベティさんていうのが、すごい古びて時が止まったようなとこなのですが、椅子の座り心地が最高に良いです。この町のこの映画館で見ると、こういう大作じゃない映画は3倍心にしみる気がする。

                    もう明日で最終日なんすけど、万一時間があって、映画見たかったら、マストゴーであります。

                    関西の方はこれから順次公開みたいだから、近所に来たらぜひ見てください。ときめけっから。

                     

                    この映画で唯一難点があるとしたら、回想から現在に巻き戻ったそのあとのシーンが完全なる蛇足なことくらいですね。

                    ない方が本当に良かったんじゃねーかと思う、ハッピーエンド。

                    いなばのこれまでの人生で、「この子役が大人になってこの俳優になっちゃうならば、いっそもう子供時代で終わらせてほしかった」映画の栄えあるぶっちぬきナンバーワンだった、「青いパパイヤの香り」を余裕で超えるミスキャスト。

                    あの可憐で不器用な18歳の彼女が、どこをどう育ってどう間違っても、絶対この女にはなんねえ。むしろライバルキャラ役の子が育ったの間違いじゃねえのか。

                    でも、回想時代が100点満点のできなんで、まあ許せます。

                     

                    みずみずしい気持ち取り戻したくなったら見るべし。

                     

                    って、大事なこと書き忘れてた。

                     

                    映画の中で、ローラースケートするシーンが、何回かとっても良い小道具として出てくるんですね。

                    ヒロインはへっぴり腰で転びまくって、困っていると、ヒーローの彼が言うんです。

                     

                    「転ばないコツを教えてやろうか?」

                     

                    答は、思いっきり彼女の背中を押して、

                     

                    「転ぶのを怖がらないことだ」

                     

                    強く押されてしばらくまっすぐ滑れるのだけど、最終的に転んでしまった彼女を助け起こして笑顔で言うのが、

                     

                    「最悪、転ぶだけなんだから。何をしにここに来てるのか、忘れるなよ」

                     

                    ローラースケートしに来たら、滑るしかない。最悪転ぶだけなんだから。

                    当たり前のことだけど、当たり前のことなんだけど、「何をしにここに来てるのか」を、転ぶのを怖がりすぎてよく忘れてしまう私の心のど真ん中に的中しました。


                    どんな時でもオチついて

                    0

                      女友達が、ある日あたいにぼやいてきた。

                       

                      「なんか、知人の女子の話がすごいつまんないのよ。まったくどうでも良い話を最初から最後まですごい細かく話すの。もう、私からしたら、どおおおおおでも良い話題なのよ。わざわざそれ話す?みたいな。それを事細かにずーっと話していくんだよね。はあ。聞いてる人もうんうんあいずち打ってるけど、それで良いの?って思うわ」

                       

                      いなば、それ聞いてびっくりした。

                      びっくりして、思わず、突っ込んでしまった。

                       

                      「いや、それ、あなたもだけど。あなたの話めちゃめちゃつまんないよ。なんのオチもひねりもない、どおおおおおでも良い話だよ? しかもそれを聞きやすいようにかいつまんだり、整理したり一切しないで、とにかく時系列で最初から最後までずーっと事細かに話さないと気が済まないでしょあなた? その知人さんといっしょだよ? 私があなたの話うんうん聞いてるのは、面白いからじゃなくて、友達として好きだからってだけよ。最初から最後まで話すという行為で何かを発散してるんだろうから付き合おうという気持ち一つで聞いてるよ。それ、知らなかったの?」

                      「…知らなかった…」

                      「うん、知れて良かったね。自分も相手も一緒だと思えば、多少気持ち楽じゃない?」

                      「…それは本当にごめんなさいでした。これからは、もっと話面白くするように気を付けます」

                      「いや! 止めてよ! そんな気を使って話したら、あなたらしさが死ぬよ! 最初から最後までずーっとどうでも良い話をしてすっきりする、そういうものだと思って今まで通り聞くし! 今のままのあなたでいて!」

                       

                      話はクソつまんねえけど、人間としては最高に楽しいから、特に不満はないのです。

                      逆に人間として面白い人が、無理に話を面白くしようとすると、もう本当に聞いてて痛みを覚えるようなことになりかねない。

                      あと、女子は話がつまんない方が、幸せをつかみやすい気がものすごくする。あたい調べだけど。

                       

                      さて、ここでいなばの初代ベリーの先生にして、人生全般の師匠である弁天先生が登場する。

                      関西人で、とにかく話が面白い、たとえつまらない話をしてても、間合いや声の出し方、表情で面白く聞かせてしまう彼女と、つい先日ばったり会って。

                       

                      「おお先生、お正月休みでリフレッシュされました?」

                      「いや、全く駄目やねん。お正月の里帰りから部屋戻ったら、…なんと、水漏れしてた」

                      「ええ?!」

                      「もう、家じゅう何もかもびしょぬれでカビが生えて、服も寝具も全部駄目。押入れの中まで水まみれ」

                      「それ、どうしたの?!」

                      「大家さんに連絡して、幸い同じ建物に空いてる部屋あったから急きょそこ開けてもらって、いそいで布団だけ買ってその晩はしのいだわ」

                      「それは不幸中の幸いでしたねえ…」

                      「でも、新しい部屋はガス通ってないから、お風呂は水漏れしてる元の部屋で入って、でも寝るのは新しい部屋で、もう落ち着かなくて参ったわ。寒いし、新しい部屋も埃が積もってるし、極め付けが」

                      「何があったの?」

                      「新しい部屋のベランダ開けたら、転がるネズミの白骨死体」

                       

                      申し訳ないけど爆笑した。

                      先生も一緒に笑ってた。

                       

                      「普通に同情させてよ!! こんな話の持ってきかた、ズルいわ!!」

                      「ごめんごめん、ついつい」

                       

                      新年早々部屋が水漏れで散々な目に合って心底げんなりしていても、つい人を笑わせてしまう。「話が面白い女」って言うのはそれくらいやりこなしてしまういきもの。


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